太陽光発電といえば、住宅の屋根や広大な土地に取り付けられているパネルを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
太陽光発電施設をつくる場合、パネルの他にも必要となる設備がいくつもあります。
今回はいまさら聞けない、太陽光発電施設に必要な設備について解説します。
設備の名称と役割
太陽光パネル
「太陽電池モジュール」や「PVモジュール」と表されることもあり、一般的には「パネル」や「モジュール」と略して呼ばれることが多いです。
太陽光エネルギーを直流電力に変換する役割があり、太陽光発電におけるスタート地点と言えます。
悪天候で太陽光が当たらなかったり、影がかかってしまったりなど、パネルに太陽光が当たらない状態では電気をつくることはできません。
そのため、発電所を設計する時点で、パネルを置く位置や角度を計算することは重要です。
架台
太陽光パネルを取り付ける土台のことです。
屋根上、野立てなど設置場所によって使用される架台は異なりますが、積雪や草木など発電所が置かれる環境によっても適した構造や高さに違いがあります。
パワーコンディショナ
省略して「パワコン」と呼ばれることが多く、Power Conditioning Subsystemの頭文字を取って「PCS」と記載されることもあります。(以下、パワコン)
パワコンは直流電力を交流電力へ変換する役割を担っています。
太陽光パネルでつくられる電力は直流で、そのままでは電気製品等で使用することができないため、交流に変換するパワコンは必須な設備です。
接続箱
複数枚ある太陽光パネルからのケーブルを接続箱で集約し、送られる電力をまとめてパワコンへ送ります。
<集電箱>
大規模な発電所の場合、電力が大き過ぎて接続箱1つに集約することが難しい場合があります。
その場合、接続箱を複数個使用し、集電箱で全ての接続箱からの直流電力を集約します。
分電盤
分電盤は名前の通り、電力を分ける役割があり、太陽光で得た電力の自家消費もしくは売電、電力会社より購入した電力を各所へ送ります。
一般家庭では「ブレーカー」の役割も担っており、過剰な電気の使用や漏電を感知して遮断します。
電力量計
一般的に「売電メーター」と呼ばれています。
電力会社から売ったり買ったりした電力を計量するメーターです。
蓄電池
パネルで発電した電気を貯めることができます。
昼間に発電して余った電力を貯めておき、夜に使用したり、災害時の停電に備えることが可能になります。
一般的な配置図
発電施設に必要な設備は、メガソーラーなどの産業用でも、家庭用でも、基本的に変わりはありません。
太陽光パネルで発電された電力は、接続箱に集約してパワコンに運ばれます。
ここまでの電力は直流のため、パワコンで交流に変換され、分電盤を通して各部屋の電気製品で使用される電力となります。
分電盤に運ばれた電力のうち余った電力は、電力量計を経由して売電されます。
足りない電力を電力会社から購入する場合は、売電と逆の流れとなるため、電力量計を経由して分電盤に運ばれることになります。
<自家消費しない場合>
<蓄電しない場合>
発電施設の運用方法によって不要になる設備、追加で必要になる設備があります。
売電を目的とした発電施設の場合、電力の自家消費をしないため、パワコンから電力量計へ電力を送ります。
不要になる設備もありますが、発電容量が大きく電圧が高い場合、変圧機能のあるキュービクルと呼ばれる設備が必要になります。
蓄電池を使用しない場合、発電された電力は自家消費もしくは売電されます。
昼に発電されて余った電力を夜に使用することはできないので、発電がされていない時に使用する電力は購入する必要があります。
蓄電池が注目されている?
太陽光発電が普及した時から存在していた蓄電池ですが、近年更に注目されています。
その理由に大きく関わっているのが「FIT制度」です。
FIT制度・FIP制度についての記事はこちら
FIT制度とFIP制度 – spblog
蓄電池利用のメリット
- 卒FITやFIT売電価格の下落に影響されない
- 災害など停電時でも電気が使用できる
- FIP制度による売電収入を増やすことができる
太陽光パネルに蓄電池を合わせて利用することで、3つのメリットが得られます。
メリットの詳細について以下に解説します。
<卒FITやFIT売電価格の下落に影響されない>
2012年に開始されたFIT制度の固定金額で売電できる期間は、発電量が10kW未満であれば10年、10kW以上であれば20年のため、10kW未満の発電施設は「卒FIT」を迎えはじめています。
卒FITを迎えると売電価格は大幅に下がってしまうため、売電せずに蓄電をし、自家消費に充てることを検討する事業者が増えています。
また、FIT制度の売電価格は年々下がっているにも関わらず、電力会社から購入する電力の価格は上昇傾向です。
そのため、発電した電力を自家消費し、購入する電力をできるだけ少なくする動きもあります。
蓄電池を利用することで、昼間に発電されて余った電力を発電が行われない夜の電力に充てることができます。
<災害など停電時でも電気が使用できる>
近年、毎年のように台風や局地的な大雨による災害が起きています。
家や職場などに蓄電池を備えておくと、災害時に電気が止まっても、連絡手段に必須な携帯電話の充電はもちろん、いつも通りの生活を維持することが可能です。
また、発電所を所有している企業のなかには「充電ステーション」として発電所を開放して地域貢献しているところもあります。
<FIP制度による売電収入を増やすことができる>
新しい買取制度として2022年に開始したFIP制度は、市場価格をベースにして売電価格が変動します。
そのため、売電価格が低い時間帯の電力を蓄電しておき、市場価値が高い時間帯の売電を増やすことで収益を上げることが可能となります。